忍者ブログ
HOME Admin Write

last supper

最後の晩餐をあなたと。

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

続けてのお題投稿になるので、下記事で一覧を更新しています。

20、シーツにくるまる

涼×菫子(Pleasure,Treasure)
です。この間の記事にもかきましたが、
本編未読でも大丈夫な仕様です。
が、本編(raison detre→depth)
も読みと一層理解が深まる気がします。
一応時間軸的には、TreasureとPleasureの間です。
なのであまあま!

前回と大違い(笑)

拍手[0回]


シーツの中、包まって丸くなって眠る癖は、子供のころからだ。
不安で眠れない時に私は、こうやって自分の体を抱える。
抱き枕を使うのをやめたのは、きっと恋人ができたから。
我ながら現金すぎる自分に呆れる。

この格好を見た彼に、猫みたいやなとか、よりコンパクトで収納もしやすいななんて、言われたのを思い出す。
見つかってかなり焦った私はごろごろと横に転がり、ベッドから落ちてしまった。
もちろん、彼は大笑い。
自分のお馬鹿な所を見られ続けた挙句パニックになり、
枕を投げつけたら、避けもせずに体で受け止めていたから、
一応悪い気持ちもあったのかなと思う。
こうやって包まっている時は眠れない時。
最近は嫌なことで眠れないというより、涼ちゃんのことを思い出して
眠れなくなることの方が格段に多い。
トレードマークの関西弁、屈託なく笑う笑顔、小さな体をすっぽり包み込んでしまう体躯。
思い浮かべて眠れないだなんて、何だか悔しくて、ちょっぴり腹立たしくもなる。
逆に、彼は私を思い出して眠れなくなったりするのかしらと思ったり。
(……そんなこと恥ずかしくて絶対聞けない!)
ああだこうだ悶々と考えているうちに、完全に睡魔に支配された。



「うわ、見事な宙返りやなあ」
くっくっと笑ってベッドの端に腰かける。
俺と菫子は、週替わりでどちらかの部屋に入り浸っていて半同棲の状態になっている。
今日は、菫子が泊まりに来ていた。自分の広いベッドで、
わざわざ縮こまって眠るのは、単に癖が抜けないだけで
遠慮しているせいじゃないだろう。そんな浅い付き合いじゃない。

彼女は割とお堅いので、ここまでの道のりには、なかなか苦労があった。
現在は付き合って三年目に突入し、社会人一年生だ。
お互いに忙しくなったため、今までのように会えなくなった。
菫子が寂しくなってしょうがなかったのだろう。
口にして言わないが、過去の再三の提案は、渋っていたのに、
この心境の変化は絶対そうに違いない。
大学時代暮らした部屋から、引っ越して、
余裕の態で菫子を迎えたのである。
割と高い階層に部屋があるし、隣の部屋との仕切りのおかげで、
洗濯物も、気にせず二人分干している。

菫子の部屋に泊まる機会の方が格段に少ないが、
彼女は女性であるし、そこは気を使うべきなので我儘を言うつもりはない。
無神経なふるまいで、怒らせて喧嘩になるのも正直耐え難い。
先に俺が折れても、逆に自分を責めるのが目に見えていた。
中々、難しいが、男はどんと広い心でいなければならないのだ。
幸い見た目にも包容力は抜群なので、騙されたと言われないよう
日々鋭意努力している。


もぞもぞとシーツの中で動く物体が、何とも可愛らしくて、
ずっと眺めていたい気持ちと、いじり倒したい気持ちが、常に葛藤していた。
気づかれないように添い寝して、驚かせるか、
最初から、気づかせてしまうか悩みどころだ。

体を傾けてそっと覗きこむと、しっかりと頭まで隠しているではないか。
(寝顔も見させてくれないなんてケチくさいやつや)
「っ……涼ちゃ……ん」

驚きと同時に歓喜してしまい、つい彼女の体を抱き寄せてしまった。
「そんなに俺が好きなんや」
ぎゅっと腕の中に閉じ込めると、一気に覚醒する気配がした。
不味い。いや、離してなるものか。
「っ……馬鹿力っ」
やはり押しのけようと必死に抵抗を始めた。
いちいち反応が大げさすぎていつも笑える。
あんなことやこんなこともとっくにしてる仲なのに、
不思議なもんだと思う。女は皆こうなのだろうか。

「堪忍せえ。逃がさへんで」

口元がひきつる。
胸元を殴る力はあっけないほど弱く、難なく封じることができた。
「寝てたんだけど」
「俺が来る前に?」
「だって自分を守るためだもん」
憎まれ口を叩く唇を指で押さえて、軽くキスをした。
「そんな嫌がられると傷つくなあ」
こちらを見上げ、大きな瞳で睨む様子は、誘っているとしか思えない。
「涼ちゃんみたいに体力馬鹿じゃないっていつか言ったでしょ。
私くたくたなんだけど、涼ちゃんは疲れてないの?」
声からして眠たげだ。
「菫子の顔見て疲れが吹き飛んだから、
これから、更に疲れても全然平気やわ」
わざと軽口で言う。
からかって遊んでいる時と本気の時と、違うことを
彼女は、鋭く気づいてくれる。
毎日でも求めたいのは山々だけれど、
無理やり迫るのは、男として最低なことだ。
「……私も涼ちゃんの顔見たら元気出るわ。
今日は抱きしめて眠って?」
彼女は、さりげなく、こっちを喜ばせる天才だった。
「お望み通りに」

意地っ張りで気が強い所も、
俺だけに見せる甘えた姿も全部愛している。
ついでに言えば夜の中の艶めいた姿も。

小さな体を抱えて横向きの体勢になる。
髪を撫でて、甘く安らかな寝顔をしばらく見つめていた。
PR

カウンタ




プロフィール

HN:
雛瀬智美
HP:
性別:
女性
自己紹介:




カレンダー

10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

カテゴリー


最新コメント

[11/18 雛瀬@管理人]
[04/09 mimana]
[12/24 雛瀬智美]
[12/24 はね]
[08/18 麻弥(ひなせ)]

ブログ内検索


フリーエリア

raison タイプ
Copyright ©  -- last supper --  All Rights Reserved
Design by CriCri / Material by 押し花とアイコン / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]