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last supper

最後の晩餐をあなたと。

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もう一人のヒロイン視点で。

色々複雑だけど、一番罪悪なのは「彼」です。

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「……あなたが好きみたい」

はっ、とする。目の前にいるのは幼い時より
自分の側にいた存在。兄のようで、決してそうではなかった。
壊れ物をあつかうように、守ってくれた。

なぜか素直になれずに強がって
可愛げのない言葉をぶつけてばかりの
私をさりげなく受け止めてくれた。
私の思い悩んでいること
を吹き飛ばしてくれる彼の言葉、
頭をなでる優しい手に、無意識で甘えてた。

気がついたときには恥ずかしくて
どこかへ埋まりたくなった。

胸に手を添えて、頬を寄せながら見上げる。
泣いている私を少し困った風情で抱きしめて腕の中で
自由に息をさせてくれる。
年上の男性。
もう一人、可愛がってくれた人がいたが、
彼は本当に兄だった。
手のかかる妹をつかず離れずの距離で、面倒を見てくれた。

何でも分かっている風情の彼が、悔しくて
恨めしくて、素直になれなかった。

いつも、いつも、側にいてくれたのに、
彼の思いに気づかぬ振りをした。

誤魔化せなくなったのは、
この恋を誰にも譲れないと思ったからだ。

年齢を重ねお互い社会人になり
いつの間にか、会う機会も減っていた。
時折電話したり、会ったりはするけれど
前みたいにじゃれ合うこともなくて
物足りなさを感じ始めていた。

それで、待ち伏せた。
彼が、この道を通ると知ってわざわざ待っていた。

「俺も好きだよ……」
少しの躊躇いもなく彼は呟いて胸に抱いた。
緩やかだけど、有無を言わさぬ力だった。

離れたくない。

私がこの手を逃したら、彼は他の女性に触れてしまう。
魅力に溢れた人だから、簡単に相手なんて見つけるだろう。

今まで何度も相手を変えて恋を楽しんできたことを
知っていたけれど、もうこの先は嫌だと思った。

私一人にして。
乾いた心だって、潤してあげたい。
髪をなで、背中をさする手を感じながら、
くてん、と身を預ける。瞳を閉じる。
車の音が、外だというのを知らせてくるが、関係ない。

この時は、どこかで泣いている人がいるだなんて知らなかった。
何もかも手に入れた私が、恨む筋合いはない。
相手は何も知らないまま、消えない傷を植えつけられた。
彼は私に愛を告げながら、余所で誰かに痛みを与えていたのだ。


たとえ誰かを傷つけても、この人だけは
譲れない。強く願う。

その代わり、私は必ず幸せにならなければならない。
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