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甘い香りと共に、赤い花びらが視界に飛び込んでくる。
クリスマスローズ。
彼を見上げれば、瞳を細めてこちらを見ていた。
爪先立ちでも、間に合わない距離が未だに悔しい。
ヒールが、足から浮いて
ほとんど脱げている状態に、頭上から笑う声が聞こえてくる。
(何よ。まさかこんなベタなことするなんて
思わなかったんだから! もう何も言えなくなっちゃったじゃない。)
アルコールなんて口にしていないのに、
頭の奥が痺れてぼーっとしていた。
付き合いはじめて二度目のクリスマス。
そう、ふたりで一緒に過ごす二度目の。
あなたがどれだけ頑張ったのか知ってる。
口に出したら軽くなってしまうかもしれない。
だから、ありがとうと耳元で囁いた。
それだけでもきっと伝わるって信じて。
バランスを崩した私の身体を長い腕が、抱きとめる。
「マニュアル通りの女って可愛いわ」
「分かりやすくて悪かったわね」
顔が真っ赤だ。彼と私の間で押し潰されかけてる薔薇と同じくらい。
はらりと一枚、花びらが落ちた。
きつく抱きしめられて、花束を持ったままだった腕が、彼の背に回る。
「悪いなんて言った? 可愛いって俺は言ったんやで」
視界が曇る。
(やだ。泣いてしまうなんて。こんな顔、
見られたら最悪だわ。)
幸い、彼の肩に頬を寄せてるから見られることはないけど、声で気づかれてる。
涙で肩を濡らしてしまったもの。
「すみれ、隙のない女より、隙を男に見せる女の方がええ。
完璧になろうとするな。
俺もお前も足掻いてもがいて無様なまま
進んでいこう」
こくりと頷いた。
プロポーズじゃないけど、クリスマスイヴの夜に
こんな言葉をもらえるなんて、とても特別じゃない?
一緒にいるだけで毎日が特別かもしれないけれど、
何故だかいつにもなく真摯な彼の眼差しにときめいてしまった。
陽気で楽天的で冗談の中に本気を混ぜる人。
本質はとても誠実だから、時折垣間見せる素にやられちゃうのよね。
腕の中から花束が、消える。
窓辺にそっと置いて戻った彼に抱きあげられた。
視界が高い。ふわふわと夢見心に、柔らかな場所に下ろされた。
隣に座った彼が、真っ直ぐに見つめてくる。
視線をどこにやればいいかわからずぐるぐるさまよわせていると、
顎を指先が捕らえた。
「恥ずかしいってば」
「ええ加減になれてほしい部分もあるか」
ボソッと呟かれて、
「無理!」
と即答した。
自分の顔を間近であんなに熱っぽく見つめられたら恥ずかしいに決まってる。
無性に逃げ出したくなる。
「俺も無理。抑えきれんくらい好きや」
はっとした時には唇に柔らかな感触を覚えていた。
瞳を閉じると、時が止まる。
彼の肩を掴んだ手に無意識に力をこめていた。
吐きだした息が、鼻から抜ける。
甘えるような声が出ていた。
体から、力が抜けて私はベッドに横たえられていた。
明かりを消して、彼が静かに覆い被さる。
すべてを暴かれて、思い通りになるしかない。
どんなに恥ずかしくても好きだから、堪えられるのだわ。
だって無防備になっても怖くないの。
自由に泳がせてくれるもの。
腕の中、安ぎに満ちた眠りをくれるひと。
飽きる程のキスととめどなく注れる眼差し。
腕がほどける度に、強く抱きしめてくれる優しさ。
離したくない。
涙を啜る唇に、胸が高鳴って、何度となく思う。
この腕のぬくもりに溶けてしまえたらと。
口に出すのは、難しいから、感じて。
ほら、こんなにあなたを好きだって叫んでる。
熱い吐息が、寝息に変わって、しあわせな眠りがやってくる。
髪を撫でて彼の寝顔を見ながら、
「メリークリスマス、涼ちゃん」
囁いた。聞こえてなくても、その笑顔に免じて許してあげる。
頬に落とした口づけに気づかれませんように。
妙に乙女!?
ま、いいか、クリスマスだし(≧∀≦)
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この記事へのコメント
無題
クリスマスの朝から良いものを読ませていただきました。ご馳走様ー!
無題
喜んでもらえて書いてよかったとしみじみ!(*^^*)
良いものだなんてうれしい!!
溶けてもらえたなら本望ですよvv
あけらさん、素敵な夜を(^з^)-☆Chu!!