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last supper

最後の晩餐をあなたと。

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藍色の瞳、灰に黒が混じりの髪の青年、
銀髪に青の瞳の青年、薄い青色の髪、栗色の瞳の少女、
その内、銀髪青年と青髪少女は向かい合い睨みあっている。
ただ一人、黒灰の青年だけは、飄々と笑み、
他の二名からは一歩引いた所で見守っていた。
「……先生!」
「何だ」
「この勝負はいつになれば終るんですか」
ふうっと溜息をつく青髪少女に銀髪青年は
平然と答えた。
「お前が負けを認めたら終るな」
「はあ!?何言ってるのよ!負けそうになってるのは飛翔先生の方でしょう」
自分が負けたくないからって勝手よね、これだからマイウェイ男は……。
「独り言ならもっと小声で言えよ」
「君たちの馬鹿さ加減って右に出るものいないよね」
モノクルを指先で弄りながら黒灰青年はつぶやいた。
毒を吐きながら笑顔なのがかなり怖い。
「ほっとけ!」
「飛翔先生と一緒にしないで!」
「言動そっくりだよ?さすが師弟というべきか」
「そういう俺とお前は似てないな、冬夜」
俺はお前みたいな鬼畜男じゃないからな。
黒灰青年・冬夜は飛翔の師であったりする。
そして青髪少女にとっては師匠の師匠にあたる(謎)
「似てたら怖いね、ぞっとするよ。ロリコンくん」
「誰がロリコンだ、誰が!」
「飛翔先生、ロリコンってロリータコンプレックスで合ってる?」
青髪少女はかわいらしく首を傾げた。飛翔から一歩距離を置いたのは無意識下の行動か。
飛翔は、不敵に笑い腕を組んだ。
「借りてくね」
ひょいと首根っこを捕まえられ青髪少女の体は宙に浮いた。
いつの間にか冬夜の腕が体に回っている。
「冬夜くん、どこ行くの?」
着眼点が違うだろと飛翔は心中つっこんだ。
「ここではないどこか」
悪戯めいた光を瞳に宿して、冬夜は青髪少女ごと姿を消した。
「……を返せ!!」
飛翔の虚しい叫びは空気を震わせる。
その瞳は怒りに燃え滾っていた。

冬夜は口元だけで笑う。
思ったとおりの反応を見せた馬鹿弟子に自分を楽しませてくれた御礼を言いたい気分だ。
無邪気な少女は地に降り立った後も笑みをたやさない。
自分に対して恐怖を感じているだろうに微塵も見せないのは幼い強がりなのかと冬夜は思う。
「……飛翔先生、上級魔術教えてくれないの。下級魔術も中級魔術も全部マスターしたのに」
「へえ、出し惜しみしてるのかな」
冬夜は知っている。彼ー飛翔ーは彼女が巣立っていくことを恐れているはず。
新たな魔術を身につければ身につけるほど魔術師への道は近づき、
やがて自分の元から離れていく。それを懸念している。
所詮師匠と弟子の関係なんて期間限定だと出会った時から知っていただろうに。
「意地悪なのよ。色んな魔術を覚えて早く一人前の魔術師になりたいのに」
このままじゃいつまで経っても見習いのままだわ。
「頑張ってね」
抑揚のない調子で冬夜はつぶやき頭を撫でた。
「うん!」
「じゃあ、もう帰りなよ」
ここ、家の近くだから。
突き放すように冬夜は言う。元々この行動に意味はない。
退屈しのぎにはなるだろうと思っていたが。
青髪少女は一瞬だけ不安を顔に表したがすぐに掻き消す。
「冬夜くんはもう帰っちゃうの?」
「飛翔怒ってるだろうしうっとうしいから
僕は遠慮しておくよ」
「置いてけぼりにされたから怒ってるのかなあ」
「やっぱ面白いねぇ、君は」
冬夜はアハハと笑い、少女の目の前から姿を掻き消した。

「ただいまー」
少女はタッタッタッと駆けて部屋へと向かう。
肩先で揃えられた青い髪が揺れていた。
「……先生、ごめんね、独りぼっちにして。怒ってる?」
天然鈍感少女に飛翔は、半ば安堵する。
怒ってないという風に少女の髪を掻き混ぜた。
「せっかく朝時間かけて整えた髪が」
「気にするな。それより夕食できてるぞ」
「また変なもの入れてないでしょうね」
飛翔の料理は見た目はいいのだが、いざ口に入れてみると
不思議な味わいに顔を顰めてしまうのだ。
飛翔曰くスパイスを利かせているらしい。
「つべこべ言わずに食べろ。まさか俺が真心込めて作った手料理を
食べないなんて言わないだろうな」
「なにそれ、横暴!」
「食べてから文句つけろ」
少女はそれきり黙った。もっともだったからか。
キッチンのテーブルに並べられた料理は、色とりどりで見た目は
かなり美味しそうだ。見た目は。
「変な薬とか入ってないわよね」
「俺は冬夜じゃない」
冬夜なら入れるということか。そら恐ろしい発言だ。
飛翔はほらと少女にナプキンを投げてよこす。
慣れた仕草で受け取った少女はナプキンを体につけた。
正面に座った飛翔も、ナプキンをつけている。
「「いただきます」」
少女は目を丸くした後微笑んだ。
「美味しい!」
「へえ初耳だな」
「初めて言ったもん」
飛翔はぴくっと口をひきつらせたが、その後は無言で料理を口に運んだ。

こんな馬鹿師弟の物語はまだまだ続く……らしい。

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