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last supper

最後の晩餐をあなたと。

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最後に置いといてしまった
「前世からの付き合い」。
これを残すのみなので、頑張って書いてみます。
そしたらこの御題に逃げなくてもよくなるし(おい)

改稿前のEden最終話を思い出しながら書きます。
下書き記事で別のネタを書こうとしたけど
何だかぐでんぐでんだったので(遠い目)

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「どこへ行くの? 」
「わかんない。でも、たどり着けると思うの」
「そう……行ってらっしゃい」
ルシアの言葉はどこまでも曖昧で掴めない話だったが、
母は黙って見送った。
青いリボンの巻かれた帽子を被りなおす。
口の端を緩く上げて笑った。
きっと、彼もこんな風に笑ったのではないか。


どくん。
心臓が跳ねる。抜けるような青空を見上げて深呼吸した。
てくてくと、丘を下る。

待ち望んでいた誰かに会える気がした。
覚えてなんていない。
もう一度巡り会うことを望んだ人。

約束をしただけで、姿も、声も言葉も覚えているわけじゃない。
それでも、あの人と会う為に生まれて、
もう一度恋をするために生きているんだと
確信している。

「……え」

ばさばさと羽音を立てて、目の前に舞い降りたのは
一羽の鷹だった。
大きな翼を広げ、知性溢れる瞳でルシアを見ている。
何か話しかけられているような気がした。
美しく雄雄しい鳥に目を奪われる。
この鷹はルシアを知っている。
もちろん、こんな鳥は見たこともない。
他の鷹とは異なる存在に思えた。

「私を知っているの? 」

答えを返すように鷹は翼をはためかせた。
風が巻き起こり、ルシアは帽子を被った頭を押さえたが、
スカートにも気をとられたため、あっけなく帽子が風に飛ばされてしまった。
慌てて帽子を追いかける。
前のめりに転びかけたルシアは、ふわと何か大きなものに包み込まれた。

「相変わらずそそっかしいな」
相変わらず……?
ぼんやり視線を上げる。銀髪に藍色の瞳を持つ
驚くほど端麗な容姿の男性に抱えられていた。
ぼ、ぼ、ぼと羞恥に頬が染まる。
お礼を言わなければと、彼を見つめた。
抱かれたままの微妙な体勢で。
ひどく懐かしくて、何故だか泣きたくなった。
「……ありがとうございます」
「俺を覚えているか」

長めの前髪が目元に翳りを落としている。
肩につくほど長い月光のごとき銀色の髪。
印象的な藍色の瞳。夜の化身そのもの。

覚えている。
愛しくて、ぽろぽろと涙が溢れ出した。
曖昧だった物がすべて合わさって、彼の姿と重なった。
「クライヴ……」
「ああ、ルシア」
彼に名を呼ばれ、つ、と胸が痛んだ。
「やっと逢えた」
ルシアを抱く腕に力がこもり、彼女も首に腕を絡めた。
「私、昔の私とは違うわよね」
「ルシアはルシアだ」
「俺にとっては数年程度だが、ルシアは……」
涙を長い指に拭われ、ふふっと笑った。
彼に出会うために、時を越えたのだ。
もう一度出会うことを神様は許してくれた。
時代に引き裂かれたことを哀れんで、
引き合わせてくれた。
「クライヴ……」
「もう一度始めよう。
その為に出逢ったんだからな」

「愛している」

すとん、と地面に下ろされて、正面から抱きしめあう。
懐かしい人の香りに包まれて、本当の自分に出逢えた気がした。

クライヴが、指笛を鳴らすと、目の前に鷹が降り立った。
「……ホークスね! 」
彼のことを知覚できた途端に、頭の中に浮かび上がった。
嬉しそうに翼をはためかせ、体を揺らす鷹は、
ルシアに向けて、一声鳴いた。
「行こうか。二度とこの手を放してなんかやらないからな」
強い言葉に、頬を染めて頷く。
繋がれた指の熱さを信じて歩き出す。

唯一無二の人とともに。








*************************
過去に帰してお別れした後、未来で巡り会う設定でした。
未来といってもルシアは元々過去から、クライヴのいる時代に
召還されたので、クライヴにとっては同じ時代の数年後です。
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